野良狼と野良少女
「え?嘘でしょ?あみぽん、キスなんかしてないよね?」
「おい旺太どうなってんだよ、叶野さんに手出したのかよ!」
私の肩をガクガク揺らす一葉ちゃんと、一ノ瀬くんの肩を同様に揺らすヤノくん。
うん、なんともすごいくらいに双子だ。
いや、そんなこと言ってる場合じゃなくって…
「…一葉ちゃん、えっと…魚のキスって漢字でどうやって書くんだっけ?」
ぐちゃぐちゃになった頭からでてきた言葉はそれだった。
言わないで。さすがに、自分でもどうかと思う。
「……はぁ?」
もうちょっと誤魔化すの上手くなりなよ、私ってば。
今誰も魚の話なんかしてないでしょうよ。
「…そんなのあたしに聞かないでよ、バカだもん。」
「お?魚偏に弱いじゃなかったっけ」
「バカ。それイワシだろ」
3人は一瞬目を丸くしていたのに、気づけば漢字の話をしていた。
あれ、作戦大成功…?
ちなみにキスは魚偏に喜ぶである。
鱚ね、鱚。なんて自分から聞いたからさすがに言えなかった。