野良狼と野良少女
あれ、デジャブ…
というか、やっぱり一ノ瀬くんの腕の中ジャストフィット…
「一葉、こいつ熱ある」
「え、嘘でしょ!?ちょっと待って太一!!」
ばたばたと慌ただしく走る足音は一葉ちゃんだろうか。
そして一人残った一ノ瀬くんは私をじっと眺め下ろす。
「…なに、いちのせくん」
「貴重だなと思って、俺に甘えるお前」
「ぅるさい、お金とるよ…」
「は、こっわ。頭おかしくなってんじゃん」
いいから座れ、とソファに座らされて一ノ瀬くんのぬくもりが離れていく。
あったかかったのに、体温。
男の人の方が女の人より体温高いんだっけ。
一ノ瀬くんの腕の中、快適だったのに。
「ん」
「大人しくしてろ、髪乾かさなきゃ熱上がんだろ」
わしゃわしゃわしゃーと髪の毛がタオルでかき乱される。
ちょっと雑な気もするけど、一ノ瀬くんらしいや。
なんというか、彼氏感…
このまま、眠ってしまいたい。
というか眠い…
ドライヤーの暖かい風と髪を撫でる一ノ瀬くんの手の穏やかさに私はそのまま目を閉じた。