野良狼と野良少女


「寝とけって書いてあんだろ、寝とけよ」



「なっ、なんで…いるん、ですか」




ついつい敬語になってしまった。


でも私はいるはずのない制服姿の一ノ瀬くんに目を丸くすることしかできなくて。




「午後の授業サボった。だりーから」




そう言ってスーパーのビニール袋を机にバサッと置く一ノ瀬くん。


学校には行ってたのか…




「まだ熱あんの」


「わかんないけど…朝よりはマシだと思う」


「へぇ、まあこれ貼っとけ」





サラッと前髪がかきあげられたかと思えば、額にひんやりとした感覚が伝わってくる。





「買ってきてくれたの?」


「腹減ってスーパー寄っただけ。嫌いな食べ物は?」


「えと…特にないかな」


「そー。じゃあできるまで寝とけ」




なんて言ってビニール袋を持った一ノ瀬くんはキッチンに消えた。



腹減ってよったなんて嘘じゃん、腹減った人冷却シート買ってこないよ。


ビニール袋から覗いてた卵とネギとお粥の元で今から何が作られるかなんてさすがの私もわかる。




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