野良狼と野良少女


「ありがとう一ノ瀬くん…」


「これで貸し2な。まあ飼い主様の為ならしょうがないって事にしてやる」




そっか、猛獣と猛獣使いだもんね。

なんて笑って、一ノ瀬くんの優しさを甘んじて受け入れることにした。





「美味しい、料理できるんだね」


「俺一人暮らし」


「へぇ……そうなんだ」





高校生で、一人暮らし。



私も人のこと言えないけど、一ノ瀬くんもなにか事情があるんだろうか。




「俺の場合親が2人とも海外にいるだけで別に深い意味はないけどな」


「…一ノ瀬くん、エスパーなの?」


「ほんとに熱に頭やられたんじゃないの、元々変だけど」


「元々は余計だよ」




一ノ瀬くんがささっと作ってくれた卵がゆは男子高校生が作ったとは思えないクオリティだった。




一人暮らしって言っても、私ほとんど料理できないのに…




負けた、そんな気がした。


一人暮らしの身としても、女子としても。




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