風船より遠く
 お父さんのいなくなった私に、頼れるのはお母さんただ一人。

 そんなお母さんまでいなくなったら私はどこにも行く宛がなくなってしまう。

 友達の家に行ったとして、そう簡単に家に置いといてもらえるはずもない。

 ぼーっと力強い風が、さっきから恐るほどに大きな音を立てて吹き付けてくる。

 転校した彼女は元気にしてるかな……。

 まともな別れ話もしないで離れ離れになってしまった。

“とっても”がつくほど仲が良かったわけじゃないけど、それでも私の中では友達だったと思う。

 ハンカチを貸すくらいの仲だったってこと。

 でも、今の彼女が私のことをどう思ってるかなんて分からないし、もしかしたら私なんて邪魔な面倒くさい人だと思われているかもしれない。

 風が私のおろした髪を揺らして逆撫でする。

 ワンピースの裾も。

 誰かに見られているような感覚もする。
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