風船より遠く
 なんか、行きたくなった。あそこに。あの、未知の細いあそこへ。未知のあそこは道が細くて、そして未知も細い。未知も少ない。

そうそう何かがあるわけじゃないし、偶然見つけたあそこは俺の好きな場所。

と言っても、あそこは俺くらいしか好きになれない場所。

 大通り、人気の多い場所。上から見れば、アリの密集地みたいな感じで気持ち悪いと思う。

 そこから少し外れたところを行くと、少し感じの悪い悪党でもいそうな場所に出る。

周りは灰色のコンクリートの壁。とても高くて太陽が遮られる。

そして、道路の電灯もところどころ割れたりして灯りが灯るところはない。

太陽が届かないここは、明るさを知らない場所。ずっと暗くて暗闇みたいで。

だから自分を隠すには丁度いい場所だった。
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