風船より遠く
 あたりは静かだけど、時々足音がしたり、コソコソ話し声がしたり、そして大声で笑っている声もする。

暗いからそうそう誰かに知られるわけもない。顔を隠しておける。

 木箱が三つくらい積み上げられた場所があった。

その奥には二人が喋っているように聞こえる。

木箱に近づいていくと木箱のそばでひっそりと奥の話を聞いているみたいな格好の女の子がいた。

下の方で二つに結んだその子の後ろ姿には、なぜか見覚えがあった。

 絢瀬すず。前に引っ越したはずの君がどうしてここに。

あと犬。

 ちょっと背伸びして奥にいるのが誰かを確認した。

一ノ瀬(いちのせ)風香。

絢瀬流羽。

 っ……!
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