風船より遠く
「そーだねー。風香ちゃんとのアレはいらないの? アレ」

「アレ?」

 アレってなんだよ。

「ハで始まって、グで終わるやつとかさー」

 ハ……グ……?

「っ……な!」

 な、なにを言ってるんだよ。

「お前なぁ、本当にそういうのはもっと……」

「親密な関係にならないと、ってな。あははっ」

 風香、どうしてお前は俺らのやりとりをおもしろそうに見てるんだよ……。風香の気持ちは冷めないけど。

「明るいところ行こう」

「わんわんわん」

 すずの姉ちゃんが声をかけた。

 暗闇の中で、光を注す。

 俺たちの前で光が落ちて零れる。

「透明人間……」

 風香がそう呟く。

「辞めようかな」

 それで、いいんじゃないか?

 俺には事情がよく分からないけど、風香がそう思うならば、それでいいんじゃないか?
< 25 / 28 >

この作品をシェア

pagetop