風船より遠く
ころりとぬいぐるみが転がり落ちた。
きっと前を歩いている子連れの物だろう。
ベビーカーに乗った幼い子供と自分より少し若いくらいの女の人。
「これ、落としましたか?」
女の人の背中に声をかける。
すると、声が届いたのか、こっちを振り向いてくれた。
「あ、それうちのかもしれないです」
そのぬいぐるみを彼女に差し出す。
可愛いパンダのぬいぐるみだった。
「ありがとうございます」
彼女は笑顔だった。
「良かったねー、さゆちゃん。大事なお友達だもんねー」
女の人はさゆちゃんと言うらしい子供に、とっておきの笑顔を送っていた。そして子供は嬉しそうに頬を綻ばせている。
自分は風香にこういう笑顔を見せただろうか。
自分にはそんな記憶がなかった。というか、そもそもあまりぬいぐるみとかおもちゃとかを買ってあげてなかった。
風香に風船を買ってあげたとか、そういうのは数年ぶりだ。
……それまで、風香にはこれといって何か買ってあげることはなかったのだ。
きっと前を歩いている子連れの物だろう。
ベビーカーに乗った幼い子供と自分より少し若いくらいの女の人。
「これ、落としましたか?」
女の人の背中に声をかける。
すると、声が届いたのか、こっちを振り向いてくれた。
「あ、それうちのかもしれないです」
そのぬいぐるみを彼女に差し出す。
可愛いパンダのぬいぐるみだった。
「ありがとうございます」
彼女は笑顔だった。
「良かったねー、さゆちゃん。大事なお友達だもんねー」
女の人はさゆちゃんと言うらしい子供に、とっておきの笑顔を送っていた。そして子供は嬉しそうに頬を綻ばせている。
自分は風香にこういう笑顔を見せただろうか。
自分にはそんな記憶がなかった。というか、そもそもあまりぬいぐるみとかおもちゃとかを買ってあげてなかった。
風香に風船を買ってあげたとか、そういうのは数年ぶりだ。
……それまで、風香にはこれといって何か買ってあげることはなかったのだ。