強くてニューゲームな契約彼氏ー恋も愛も無理ゲーではありません
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あかりの祖父母の家は車を2時間ほど走らせた場所にある。
あかりを育んだ土地は静かな空気が流れ、時計の針をゆっくり進めて残した原風景が都会育ちにも懐かしさを与えた。
心の故郷とでも言おうか、ヨリの運転する高級外車はそんな景観を損ねてしまう。
田植えの準備をする農家がメタリックボディーから放たれる轟音に驚き、行き先を追うと、車が停まったのはーー地元の名士、元宮家。
2人が到着時、縁側でお茶を飲んでいた老夫婦はど派手な車が玄関に横付けされたと思いきや、そこからウェディングドレスを着た孫が降りてきたものだから、湯呑を落とす。
「あ、あかり! あんた一体どうしたの?」
都会に行き、擦れて帰って来るならまだしも、花嫁姿で帰ってくるとは。夫婦の驚きたるや察して余る。一体どうしたのか、心の底から言いたくもなるだろう。
「お爺ちゃん、お婆ちゃん、ただいま。えっとこれには事情があってね。こちら契約彼氏のヨリさんです。車を見れば分かるよね、お金持ちなの」
湯呑を拾うか、自体の把握をしようか決めかねている祖父母にマイペースな帰宅の挨拶が浴びせられ、あかりはくるり回ってドレスを見せた。
「お姉さん、待って。オレから説明したい。これ以上の刺激を与えると、ご夫婦に健康被害を出しそう」
金持ちで契約彼氏、パワーワードのみで紹介されたヨリは襟足を掻き、あかりの言葉を止めた。
祖父母は瞬きを忘れ、息を詰め、孫を見詰める。視界の隅でヨリが何度も会釈すると、金縛りが解け祖父が怒鳴って指示を出す。
「ご近所さんの目もある。とにかく中に入れ!」
あかりの家は門構えからして立派であり、豪農として栄えてきた歴史が伺える。
ヨリが敷地内に駐車しているとあかりは先に部屋に上がり、階段を駆けていく。どうやらヨリが説明をすると言ったので任せたのであろう。
弁解の場にはヨリひとりが通される。畳の匂いがする和室、地元の洞窟へのヒントが隠されていそうな掛け軸が飾られており、強面祖父と柔和な祖母に挟まれた。
彼はここに至る経緯を丁寧に伝える。
カフェで恋人に振られているのを見かけ声を掛けてみた事。恋愛と結婚を求められる女性になろうと誘った事、またその様子を配信する事、改めて言葉にしてみたらドラマやマンガのようだ。
話が祖父母にウェディングドレスを見せたいとの下りに及ぶと、夫婦は畳へ額をつける。
配信のネタとしてドレスを着せてしまったのを咎められる覚悟をしていたヨリは一瞬呆け、すぐ同じ姿勢をとった。
あかりの祖父母の家は車を2時間ほど走らせた場所にある。
あかりを育んだ土地は静かな空気が流れ、時計の針をゆっくり進めて残した原風景が都会育ちにも懐かしさを与えた。
心の故郷とでも言おうか、ヨリの運転する高級外車はそんな景観を損ねてしまう。
田植えの準備をする農家がメタリックボディーから放たれる轟音に驚き、行き先を追うと、車が停まったのはーー地元の名士、元宮家。
2人が到着時、縁側でお茶を飲んでいた老夫婦はど派手な車が玄関に横付けされたと思いきや、そこからウェディングドレスを着た孫が降りてきたものだから、湯呑を落とす。
「あ、あかり! あんた一体どうしたの?」
都会に行き、擦れて帰って来るならまだしも、花嫁姿で帰ってくるとは。夫婦の驚きたるや察して余る。一体どうしたのか、心の底から言いたくもなるだろう。
「お爺ちゃん、お婆ちゃん、ただいま。えっとこれには事情があってね。こちら契約彼氏のヨリさんです。車を見れば分かるよね、お金持ちなの」
湯呑を拾うか、自体の把握をしようか決めかねている祖父母にマイペースな帰宅の挨拶が浴びせられ、あかりはくるり回ってドレスを見せた。
「お姉さん、待って。オレから説明したい。これ以上の刺激を与えると、ご夫婦に健康被害を出しそう」
金持ちで契約彼氏、パワーワードのみで紹介されたヨリは襟足を掻き、あかりの言葉を止めた。
祖父母は瞬きを忘れ、息を詰め、孫を見詰める。視界の隅でヨリが何度も会釈すると、金縛りが解け祖父が怒鳴って指示を出す。
「ご近所さんの目もある。とにかく中に入れ!」
あかりの家は門構えからして立派であり、豪農として栄えてきた歴史が伺える。
ヨリが敷地内に駐車しているとあかりは先に部屋に上がり、階段を駆けていく。どうやらヨリが説明をすると言ったので任せたのであろう。
弁解の場にはヨリひとりが通される。畳の匂いがする和室、地元の洞窟へのヒントが隠されていそうな掛け軸が飾られており、強面祖父と柔和な祖母に挟まれた。
彼はここに至る経緯を丁寧に伝える。
カフェで恋人に振られているのを見かけ声を掛けてみた事。恋愛と結婚を求められる女性になろうと誘った事、またその様子を配信する事、改めて言葉にしてみたらドラマやマンガのようだ。
話が祖父母にウェディングドレスを見せたいとの下りに及ぶと、夫婦は畳へ額をつける。
配信のネタとしてドレスを着せてしまったのを咎められる覚悟をしていたヨリは一瞬呆け、すぐ同じ姿勢をとった。