強くてニューゲームな契約彼氏ー恋も愛も無理ゲーではありません
 あかりが部屋ーーもとい倉庫の片隅で立っている中、ヨリは奥から椅子とホワイトボードを持ってきた。
 椅子が一脚しかないのは流れ的に嫌な予感がしたが、ここは流石にあかりを座らせてくれる。

「失礼します」

 採用試験よろしく、一礼して着席。

「畏まらなくていいってば。コート脱がなくていいの? 寒い?」
「寒くありません!」
「敬語やめない?」
「そういう訳には……」

 あかりはヨリに雇われる立場。フランクに接するのは気が引ける。

「まっ、お姉さんがいいならいいや」

 あかりが脱いだコートをヨリは素早く回収し、ホワイトボードの上にかけた。その際、ボード表面を袖口で拭いホコリがつかないよう気遣う。

「オレを知らなかったみたいだけど、あれから検索とかしてくれた?」
「はい」
「ならオレがどんな活動してるか理解して、協力してくれると思っていい?」

 頷く、あかり。ヨリスのブログ以外はオリーブオイルや水を宣伝している動画を観た。

「ありがとう助かるよ。ゲームチャンネルがマンネリ気味で挽回しないとやばいんだ」

 ヨリはヘソを出しながら腹をかく。ボードに寄り掛かり気怠さも隠さない。

 本当に有難がっているか定かじゃないものの、話は進められていく。

「育成っていうのはね、オレがお姉さんの彼氏になって、あ、彼氏っていっても期間限定彼氏だよ」

 ボードへあかりの育成計画を書き出し、滑らかな説明をする。
 ヨリの声は聞き取りやすく、しっかりコンセプトを固めているのが伝わる。

 計画によれば育成には三段階のプロセスがあり、最初はあかりの紹介動画だ。

「簡単な話、恋愛も結婚もできるお姉さんにする作戦」
「あ、あの」

 話の切れ間に挙手する、あかり。

「質問? どうぞ」
「報酬はどのくらい頂けるんでしょう?」
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