この初恋に、ピリオドを
「うん、結婚しよう!」

結婚の意味すらよくわからないまま、二人は指切りを交わした。そして、総司の中に心春はしっかりと刻まれたまま大人になった。

『見合いは日曜日の十二時から××の料亭で行おう』

上司から届いたメールを見て、総司は頰を緩ませた。



お見合い当日、総司は緊張を覚えながら案内された個室に両親と共に入る。料亭には何度か上司と接待のために入ったことはあったものの、今回は今まで以上に緊張してしまう。

(春ちゃん、僕のことを覚えてくれているかな?)

総司の頭の中には、心春と過ごした一年間が色褪せぬまま残っている。もちろんあの約束も覚えている。もしも、心春が覚えていてくれたら……。そう想像するだけで幸せが込み上げてきた。

「まさか、警察官の偉いさんの娘さんとの縁談が来るなんてなぁ……」

「総司、粗相のないようにね」

父は嬉しそうに、母は少し不安げに言う。総司は「大丈夫だよ」と笑いながら座布団の上に座り、降谷管理官が来るのを待った。
< 11 / 43 >

この作品をシェア

pagetop