この初恋に、ピリオドを
十五分ほど経った頃、ゆっくりと部屋の襖が開いていく。そこには、上等なスーツに身を包んだ降谷管理官と着物を着た降谷管理官の妻がいた。

「少し遅れてしまい、申し訳ありません」

降谷管理官が頭を下げると、隣にいる妻も同じように頭を下げる。その時、二人の後ろに心春がいるのが見えた。刹那、総司の胸が高鳴っていく。

(春ちゃん……!)

髪は結い上げられ、綺麗な赤い髪飾りをつけ、顔にはメイクが施され、白い花の柄の赤い振袖を着ている彼女は、あの頃より当然背も高くなり、体つきや顔立ちも変化していても、初恋の人だとわかる。だが、その顔に花が咲いたような笑顔はない。無表情のまま俯きがちで部屋に入ってくる。

(緊張しているのかな?)

総司は笑みを浮かべ、「こんにちは」と話しかけてみる。心春は無表情のまま「……こんにちは」と小さな声で返し、座布団の上に座った。

「こんなに可愛らしいお嬢さんとうちの息子が結婚なんて、もったいないくらいですな」
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