この初恋に、ピリオドを
(小さい頃はどんな風に話しかけていたんだっけ……)

話したいこと、聞きたいことはたくさんあった。だが、言葉は喉に突っかかって出てこない。

「失礼します。お料理をお持ちしました」

一言も総司と心春は話せないまま、料理が運ばれてきてしまう。並べられたのは、まるで芸術作品かと思うほど美しい懐石料理だ。

「おいしそうですね!」

笑顔を浮かべ、総司は心春に向かって言ってみる。だが、心春は何も話すことなくただ料理をボウッと見ているだけだった。その様子に総司の胸に痛みが走る。

(僕のこと、春ちゃんは本当に忘れてしまったんだ……)

好きな人が目の前にいるはずなのに、総司の胸は苦しくなっていく。それでもお見合いは進んでいった。

「ここの料理は本当においしいんですよ。きっと気に入ります」

降谷管理官が言い、父と母が「それは楽しみです」と言いながら箸を持つ。総司も綺麗に盛り付けられた野菜の和え物を口にした。優しい味が口の中に広がっていく。

「すごくおいしいです」
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