この初恋に、ピリオドを
その日も式場へ打ち合わせに行ったのだが、打ち合わせが午後七時までかかり、もう遅い時間になってきたため、総司と心春は式場近くにあるレストランへと入った。全国チェーンのファミレスである。

「今日も忙しかったですね」

頼んだハンバーグを食べながら総司は話しかける。恋愛ドラマのラストで必ず登場するであろう結婚式の準備がこんなにも大変だったとは思いもしなかった。

「……はい、そうですね」

心春はシーザーサラダを少しずつ食べながら言う。その顔は疲れているように見えた。

「今日は早く休みましょうか」

「はい……」

会話はこれで終わってしまう。だが、同棲し始めた頃に比べれば、心春と顔を合わす時間が増え、総司が話しかければ少しは話してくれるようにはなった。だが、二人の間にはまだまだ分厚い壁がある。

「……あの!」

総司はフォークとナイフを置き、真っ直ぐ心春を見つめる。心春を見るたびに、この心は動いている。心春に対する恋は生きている。緊張を覚えながら、総司は口を開く。
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