この初恋に、ピリオドを
「僕たち同い年で、もう結婚する間柄ですし、その……敬語、やめませんか?」

ずっと思っていたことだった。そして、期待していたことでもあった。敬語をやめ、幼かったあの頃のように「春ちゃん」と呼べば思い出してくれるのでは、そう思っていたのだ。

心春はシーザーサラダにフォークを刺した後、ゆっくりと俯いていく。頭が下がったことで見えなくなった彼女の口から、ゆっくりと言葉が紡がれる。

「好きにしてください。敬語で話しなくなければ、別に敬語で話しかけてこなくて結構ですし、私のことを好きに呼んでくださって構いませんので。ですが、私はこのまま敬語で話します」

「そっか……」

総司は再びナイフとフォークを手に取る。どれだけ自分が想っていても、その想いに心春は振り向いてはくれない。きっと愛を囁いたところでそれは変わらないだろう。

(やっぱり春ちゃんはーーー)

総司が一番考えたくない結末に辿り着こうとしたその時、窓ガラスがノックされる。横を見れば、降谷管理官とその妻が立っていた。
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