この初恋に、ピリオドを
「……大丈夫だから」

好きな人の口から放たれるのは、見え見えの嘘だ。それでも彼女の両親はその嘘に安心する。だが、総司の心は抉られていく。

(嫌いだって行動は言っているのに、「大丈夫」なんて……)

ただ、作り笑いを浮かべることしかできない。



それから数日後、総司と心春は都内にある動物園に来ていた。降谷管理官からチケットを貰ったためだ。

「心春さん、シロクマがいますよ。大きいですね〜」

動物園に最後に来たのは小学生の頃だ。ライオンやキリンなどをこの目で見られることに少し総司は興奮し、笑顔で話しかける。

「……はい、とても大きいです」

心春はジッとシロクマを見つめている。ゆっくりと歩いていたシロクマは、水の中に勢いよく飛び込む。すると、のんびりと歩いていた時とは思えないほど早く泳ぎ始めた。

「早い……」

心春の横顔をチラリと見る。無表情の心春の目は、何故か潤んでいる。

「心春さん?」
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