この初恋に、ピリオドを
「春ちゃん!春ちゃん!」

地面に倒れた際に切ってしまったのか、心春の頭からは真っ赤な鮮血が流れている。止血をしてあげたいが、頭を強く打っている可能性もあるため、下手に動かすことはできない。

その時、心春の目が薄く開いた。淡いピンク色のグロスが塗られた唇がゆっくり動く。刹那、周りに集まった野次馬の声が消え、まるで世界に二人しかいないような不思議な気持ちに総司はなった。

「春ちゃん……?」

「I want to see you(あなたに会いたい)」

そう言った後、心春の目は再び閉じられる。そして、総司の耳に騒めきが戻っていく。

「あの子、大丈夫かな?」

「救急車はもう呼んだのか?」

「この中に、お医者さんか看護師さんはいませんか!?」

心春の手を握っていた総司の手が震える。その瞳からは涙が出てしまいそうだった。だが、その涙は心春を心配してのものではない。悲しいから泣きたいのだ。

(春ちゃんは、もう僕の知らない大人になったんだね……)
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