この初恋に、ピリオドを
総司がそう言うと、どこか緊張したような表情だった降谷管理官は一瞬にして嬉しそうな顔になる。そして、「ありがとう!!」と言いながら総司の手を掴んだ。

「絶対に娘を説得して見合いさせる。だから、前向きに考えてほしい!日程はまた連絡する!」

降谷管理官はそう言い、どこか下手くそなスキップをしながら会議室を出て行く。その様子を見送った後、総司は頰に触れた。きっと頰は赤く染まっているに違いない。

(まさか、春ちゃんが降谷管理官の娘さんだったなんて……)

高鳴る鼓動と共に、優しい記憶が蘇っていった。



総司が春ちゃんーーー降谷心春(ふるやこはる)と初めて出会ったのは、彼が八歳の頃だった。

総司の父は会社員だが転勤が多く、日本のあちこちに総司は幼い頃から引っ越していた。所謂転勤族である。

友達ができてもすぐに引っ越してしまうため、総司は次第に友達を作ることをやめた。離れても友達だよ、と言いながら見送ってくれた友達は引っ越すと一度も連絡をくれなくなり、連絡をすると「誰?」と返されることもあり、虚しくなっていったからだ。
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