この初恋に、ピリオドを
今回引っ越したのは東京だった。おしゃれなお店やカフェがたくさんあり、買い物好きの総司の母はとても喜んでいた。だが、総司は「どうせ二年くらいしたらまた引っ越すんでしょ」と俯いていた。

学校の休み時間は本をいつも読み、サッカーや鬼ごっこに誘われても断り、学校が終わってからは近所にある公園のベンチに座ってボウッとするのが総司の日常だった。ーーーあの日までは。

総司がいつものようにボウッとしていると、足元にボールが転がってきた。ボールを総司が拾うと、「それ、私の!」と声をかけられる。顔を上げた時、総司の頬が赤く染まっていく。

パッチリとした二重の目はキラキラと星のように輝き、花が咲いたような笑顔を浮かべるとその両頬にはエクボが浮かぶ。公園で遊ぶには場違いとも思われる可愛らしいピンクの花柄のワンピースを着た女の子が立っていた。

その女の子の瞳から目が離せず、胸が全力で走った後のようにドキドキと音がして苦しい。上ずった声で総司は言った。

「ど、どうぞ……」

「ありがと!」
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