この嘘に、ピリオドを
小さく彼の名前を呟いたその時、心春の体から力が一瞬にして抜けていった。ぐらりと視界が大きく揺れ、心春の体は地面に倒れていく。前を歩く総司が何かを話しているが、聞き取ることができない。

（あんまり最近眠れていなかったから……）

地面に叩き付けられ、心春の目の前が真っ暗になる。一瞬にして意識は遠のいていた。

（このまま、死ねたらいいのに……）

暗くぼんやりとした意識の中、心春は思った。仕事を辞めさせられ、お見合いをさせられ、結婚をさせられようとしている。これからの人生には、希望も情熱もない。そんな人生を歩むくらいなら死んだ方がマシだと思っている。

（でも、もしも今日死んでしまうなら……）

頭の中に彼の笑顔が浮かぶ。それだけで胸が高鳴る。心春の口が言葉を紡ぐ。

「I want to see you（あなたに会いたい）」



救急車で搬送され、検査を受け、処置をされている時に心春は意識を取り戻した。

「降谷さん、わかりますか？」

医師の顔がはっきり見えた時、心春は死ねなかったのだとわかる。現実世界で生きていかなくてはならないことが、酷く残念だった。
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