この嘘に、ピリオドを
(この程度じゃ、人は死ねないのね)

ベッドの上に寝かされたままボウッとしていると、処置室のドアがゆっくりと開いた。そして、「心春さん」と声をかけられる。入ってきたのは当然付き添ってくれた総司だった。

総司は心配そうな顔をしていた。心春は「申し訳ありません」と口にしたものの、そこに感情はない。総司の心配は演技だと思っているためだ。

「脳などに異常はないそうです」

数日もすれば頭の包帯は取れる。傷も残らない。そう説明された後、総司の口が思いもよらないことを告げた。

「僕たち、結婚するのはやめましょう」

総司は優しい笑みを浮かべていた。言葉の意味がわからず、心春の顔に表情が浮かぶ。総司は続けた。

「僕にはあなたを幸せにすることはできない。きっとあなたを傷付けてしまう。だから、もう終わりにしましょう。あなたはもう、自由だ」

結婚はやめましょう……もう自由……。総司の言った言葉を心の中で心春は繰り返す。そして、数秒かけてその言葉の意味を理解した時、顔には自然と笑みが浮かんでいた。これで、もう逃げることができるのだ。ジョンに想いを伝えられる。会いに行ける。

「……ありがとうございます」
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