チャンニャイ伝説
チャンニャイ伝説
とある海に街があった。そこは陸から遠く、人間や動物などの天敵があまり来なかったので、昔からさかなの市街地としてにぎわっていた。最近では電車やバスが張り巡らされ、特急に乗れば20分で岩場や深海へも行けるという便利さから会社や店がたくさん並ぶ都会へと発展していった。それに何より、この土地には有名な都市伝説がある。それが「チャンニャイ伝説」。300年に一度、水面からチャンニャイという謎の巨大で虹色に光る生き物が降りてきて、それを見たらケガも病気も治るし悩み事もすっかりなくなるのだという。信じる人も信じない人もいるけれど、そのチャンニャイが降りてくるという日は今週の金曜日に迫っているのであった。
その街から少し離れた田舎の村ではしかくりんというなにかの生き物の子供がいた。しかくりんは10人ほど友達をつれて、チャンニャイを一目見ようと街へ出かける支度をしていた。しかくりんは友達に言った。「チャンニャイって本当にいると思う?」「どこかにはいるだろう」そうして夜遅くまで話し合った。朝になって小学校に行っても、授業中に先生がダジャレを言ってもチャンニャイ伝説に気を取られてそわそわしていた。いよいよ木曜日になった。先生には体調が悪いから休むと言って、お母さんやお父さんには学校に行くと言えばいい。しかくりんと友達は物置に隠れて話し合った。わくわくしていたので夜遅くまで寝れなかったけど、お父さんが来て「なんかフワフワして、どうしたん?」と言われたから慌てて寝たフリをした。それから2分ぐらいしか経ってないような気がしたが、気がつくと金曜日だった。すぐ飛び起きて前から準備していたカバンを担いで待ち合わせ場所の「あほんだら広場」に着くともうみんなそろっていた。行きと帰りの電車賃を確認して駅へ出発した。駅員が変な目で見ているのをチラチラ気にしながら改札を通りぬけ、電車に乗った。今頃みんなは席について授業を受けているのだと考えると変な気持ちになって、せっかく来たのにみんな緊張してキョロキョロしだした。一言も話さないまま30分ぐらいたって大きな駅に着いた。人混みをぬけて外に出るとやっとほっとしたのかみんなテストの結果を言い合ったり、嫌いな先生の噂や悪口を言いだしたり、電車オタクがウンチクを言ったりした。しばらく歩いて行くと公園に人だかりができているのを見つけたので寄っていくと、やはりみんなチャンニャイ目当てだった。入り口にいたオッサンはタバコを吸いながら「古い巻物には10時にチャンニャイが来るって書いとったけど一向に来んなぁ」など言って空を見つめている。しかくりんたちもその横に座って空を見上げて話を続けた。学校の椅子がガタガタするから折りたたんだ紙を敷いてたらその紙が大事な書類だったこと、トイレ掃除をサボって怒られた時の先生のズボンのチャックが開いてたことなど色々話して、誰の話が1番面白いか対決になり、それから流行りアニメのキャラクターで誰が1番強いか対決になり、どのテレビ番組に出てみたいかの話題になり、とうとうネタが尽きたのかチャンニャイは本当にいるのかという話題に戻った。そして電車オタクと背の高いやつが言った。「僕、思ったんだけど、チャンニャイなんていないと思う」しかくりんは「そんなわけ・・・」と言いかけて周りを見回すと公園には誰もいなかった。夕方のような日差しが照っている。「もう10分だけ待とう」そう言ったが、背の高いやつは帰る気満々な様子でリュックを背負った。「でもみんなで、こうやって集まっただけでも、楽しかったやん」と坊主頭のやつが全く楽しくなさそうに言った。最後までねばっていたしかくりんも「チャンニャイなんて誰かが作った迷信だろうな」と諦めて駅の方へ向かった。切符を買おうとみんな1列にならんでいると、変な匂いがしてきた。おかしいなと思って公園の方を見てみると、虹色の湯気がたっていた。しかくりんは急いでみんなを呼んで公園に行くと、10メートルもあるような大きなクリオネがキラキラ輝いて降りてきた。「これがチャンニャイなのだろうか」みんなが声を合わせてそう言った。すると光る怪物はもっと近くにやってきてこうしゃべった「そうや」。みんな驚いたが、思わず鼻をつまんだ。チャンニャイの口からドブのような匂いがしたのだ。「チャンニャイはどこから来たんですか?」しかくりんがそう尋ねると、チャンニャイはゆっくり話した。「遠い世界や」声と同時にまたドブの匂いが漂ってきた。しかくりんも友達もこう思ったに違いない。見た目は綺麗なのに口が臭い、と。チャンニャイはみんなにこう言った。「わしは君らに話さんといけんことがある。わしは、この世界の奴らには伝説と思われておる。でも、そんな扱いされるのは恥ずかしくて嫌なんや。だから、今日は行かんとこうかと思って、家でゴロゴロしてたんや。でもなんでここにおるんかわかるか?」みんな夢なのか現実なのか分からなくなっていた。電車オタクが答えた。「分からないです。」するとチャンニャイは言った。「ホントのことをいうとやな、わしは、警察官や。君らの親と学校から通報があったんや。学校サボって遊んどるって!」みんなギクッとした。「だからやな、せっかく家てゴロゴロしてんのにわざわざ来たんや。学校の先生に特別指導受けさせるように言うといたからな!!」みんなギャーギャーいって走り出すのをチャンニャイは片手でつかみ、警察手帳をピロピロ開いたり閉じたりしながら学校まで飛んでいった。それからというもの、しかくりんたちはチャンニャイのことは大嫌いになったし、特別指導の先生のことはもっと大嫌いになった。だけど、チャンニャイのおかげかケガも病気も悩み事も全くしなくなったのであった。
作:Atu Oti
その街から少し離れた田舎の村ではしかくりんというなにかの生き物の子供がいた。しかくりんは10人ほど友達をつれて、チャンニャイを一目見ようと街へ出かける支度をしていた。しかくりんは友達に言った。「チャンニャイって本当にいると思う?」「どこかにはいるだろう」そうして夜遅くまで話し合った。朝になって小学校に行っても、授業中に先生がダジャレを言ってもチャンニャイ伝説に気を取られてそわそわしていた。いよいよ木曜日になった。先生には体調が悪いから休むと言って、お母さんやお父さんには学校に行くと言えばいい。しかくりんと友達は物置に隠れて話し合った。わくわくしていたので夜遅くまで寝れなかったけど、お父さんが来て「なんかフワフワして、どうしたん?」と言われたから慌てて寝たフリをした。それから2分ぐらいしか経ってないような気がしたが、気がつくと金曜日だった。すぐ飛び起きて前から準備していたカバンを担いで待ち合わせ場所の「あほんだら広場」に着くともうみんなそろっていた。行きと帰りの電車賃を確認して駅へ出発した。駅員が変な目で見ているのをチラチラ気にしながら改札を通りぬけ、電車に乗った。今頃みんなは席について授業を受けているのだと考えると変な気持ちになって、せっかく来たのにみんな緊張してキョロキョロしだした。一言も話さないまま30分ぐらいたって大きな駅に着いた。人混みをぬけて外に出るとやっとほっとしたのかみんなテストの結果を言い合ったり、嫌いな先生の噂や悪口を言いだしたり、電車オタクがウンチクを言ったりした。しばらく歩いて行くと公園に人だかりができているのを見つけたので寄っていくと、やはりみんなチャンニャイ目当てだった。入り口にいたオッサンはタバコを吸いながら「古い巻物には10時にチャンニャイが来るって書いとったけど一向に来んなぁ」など言って空を見つめている。しかくりんたちもその横に座って空を見上げて話を続けた。学校の椅子がガタガタするから折りたたんだ紙を敷いてたらその紙が大事な書類だったこと、トイレ掃除をサボって怒られた時の先生のズボンのチャックが開いてたことなど色々話して、誰の話が1番面白いか対決になり、それから流行りアニメのキャラクターで誰が1番強いか対決になり、どのテレビ番組に出てみたいかの話題になり、とうとうネタが尽きたのかチャンニャイは本当にいるのかという話題に戻った。そして電車オタクと背の高いやつが言った。「僕、思ったんだけど、チャンニャイなんていないと思う」しかくりんは「そんなわけ・・・」と言いかけて周りを見回すと公園には誰もいなかった。夕方のような日差しが照っている。「もう10分だけ待とう」そう言ったが、背の高いやつは帰る気満々な様子でリュックを背負った。「でもみんなで、こうやって集まっただけでも、楽しかったやん」と坊主頭のやつが全く楽しくなさそうに言った。最後までねばっていたしかくりんも「チャンニャイなんて誰かが作った迷信だろうな」と諦めて駅の方へ向かった。切符を買おうとみんな1列にならんでいると、変な匂いがしてきた。おかしいなと思って公園の方を見てみると、虹色の湯気がたっていた。しかくりんは急いでみんなを呼んで公園に行くと、10メートルもあるような大きなクリオネがキラキラ輝いて降りてきた。「これがチャンニャイなのだろうか」みんなが声を合わせてそう言った。すると光る怪物はもっと近くにやってきてこうしゃべった「そうや」。みんな驚いたが、思わず鼻をつまんだ。チャンニャイの口からドブのような匂いがしたのだ。「チャンニャイはどこから来たんですか?」しかくりんがそう尋ねると、チャンニャイはゆっくり話した。「遠い世界や」声と同時にまたドブの匂いが漂ってきた。しかくりんも友達もこう思ったに違いない。見た目は綺麗なのに口が臭い、と。チャンニャイはみんなにこう言った。「わしは君らに話さんといけんことがある。わしは、この世界の奴らには伝説と思われておる。でも、そんな扱いされるのは恥ずかしくて嫌なんや。だから、今日は行かんとこうかと思って、家でゴロゴロしてたんや。でもなんでここにおるんかわかるか?」みんな夢なのか現実なのか分からなくなっていた。電車オタクが答えた。「分からないです。」するとチャンニャイは言った。「ホントのことをいうとやな、わしは、警察官や。君らの親と学校から通報があったんや。学校サボって遊んどるって!」みんなギクッとした。「だからやな、せっかく家てゴロゴロしてんのにわざわざ来たんや。学校の先生に特別指導受けさせるように言うといたからな!!」みんなギャーギャーいって走り出すのをチャンニャイは片手でつかみ、警察手帳をピロピロ開いたり閉じたりしながら学校まで飛んでいった。それからというもの、しかくりんたちはチャンニャイのことは大嫌いになったし、特別指導の先生のことはもっと大嫌いになった。だけど、チャンニャイのおかげかケガも病気も悩み事も全くしなくなったのであった。
作:Atu Oti