私が欲しいのは、青い春のその先

中庭に植わった植物と植物の間、小さな虹が輝いている。



「あれ、なんでこんなところに?」



私の声も少し高くなる。



「多分、園芸部の方が水をまいたんでしょうね?キレイですよね」

「はい、キレイですっ」

「先生は久しぶりに虹、見ました」



そう言う美しい横顔の沢渡先生を見て、
「なんかお裾分けされた気持ちです」
と、私は笑った。



「え?お裾分け?」

「虹を見られたなんて、幸せじゃないですか?先生にその幸せのお裾分けをしてもらえました」

「……なるほど、お裾分け」



先生は、
「いいですね、そういうの」
と、小さな子みたいに満面の笑みを私に向けた。



あぁ、好き。

その笑顔、好きっ!



言いたい。

この気持ち。

先生に打ち明けたい。




「先生っ、あの……!」



私は勢い余って、思わず沢渡先生の腕を掴みそうになった。

……掴みそうになって、でも、やめた。



< 10 / 20 >

この作品をシェア

pagetop