私が欲しいのは、青い春のその先
中庭に植わった植物と植物の間、小さな虹が輝いている。
「あれ、なんでこんなところに?」
私の声も少し高くなる。
「多分、園芸部の方が水をまいたんでしょうね?キレイですよね」
「はい、キレイですっ」
「先生は久しぶりに虹、見ました」
そう言う美しい横顔の沢渡先生を見て、
「なんかお裾分けされた気持ちです」
と、私は笑った。
「え?お裾分け?」
「虹を見られたなんて、幸せじゃないですか?先生にその幸せのお裾分けをしてもらえました」
「……なるほど、お裾分け」
先生は、
「いいですね、そういうの」
と、小さな子みたいに満面の笑みを私に向けた。
あぁ、好き。
その笑顔、好きっ!
言いたい。
この気持ち。
先生に打ち明けたい。
「先生っ、あの……!」
私は勢い余って、思わず沢渡先生の腕を掴みそうになった。
……掴みそうになって、でも、やめた。