私が欲しいのは、青い春のその先

沢渡先生は黙った。

その沈黙に絶望感を味わいかけた時。




先生の顔が、赤くなった。




「……もう、好きって言ってもいいんですよね?」
と、他の誰でもない、沢渡先生が言った。





「え?」




私の頬が熱を持っていく。




先生はあの頃と変わらない、心地良い声で言う。







「好きですよ、黒崎さん。本当は、ずっと前から」







先生の赤い顔が、星明かりみたいな街灯に照らされて、私は夢でも見ているんじゃないかと思った。

だけど頬を伝う涙が熱くて、
「夢じゃないんだ?」
と、呟いた。







私、ずっと欲しかった。





生徒じゃなくて。




恋人として、先生の隣に立てる日々。







「……黒崎さんにお願いしてもいいですか?」

「何ですか?」



先生は私の頬の涙を優しく指で拭って、そっと抱きしめた。





< 19 / 20 >

この作品をシェア

pagetop