私が欲しいのは、青い春のその先
……そんなことを考えている内に、ひとり、またひとりと、クラスメートが睡魔に勝てずにうつむいていく。
「……あれ?みんな静かですね」
沢渡先生が黒板から離れて、振り返った。
そしてこの状況を目の当たりにして、
「おぉ、寝てる……」
と、呟いている。
(いや、『寝てる……』じゃないし)
「黒崎さんだけ起きていてくれていますね」
と、先生は私を見た。
それからニコッと笑ってくれる。
「!!」
沢渡先生の穏やかな、あたたかい笑顔に、私の心はざめく。
ときめきが、一瞬で睡魔を倒した。
「でもなんで、みんな寝ちゃったんでしょうね?」
教卓にもたれて、教科書を閉じた先生。
「先生……、声が心地良いんですよ。多分」
「多分?」
「いや、知らないですけど」
……知らないこともないけど、まぁ、ちょっと照れるし。
先生は穏やかな口調で、
「でも、黒崎さんは起きていてくれて、ありがとうございます」
と言って、笑った。