課長に恋するまで
 月曜日。

 うちの課にも新人が入って来て、間宮は嬉しそうに先輩風をふかしていた。
 新人はしばらく社内研修がある為、一緒に働く事はないのだけど。

 間宮が入って来て、もう一年が経つのかと、過ぎる時間の速さに少しだけ切なくなる。
 そして、課長が来て半年が経つ。
 来たばかりの課長は無表情だったけど、最近は温かみのある表情を見せてくれるようになった。

 朝、自分の席につくと、パソコンの電源を入れて、次に課長の席を見るのが日課になった。

 課長は左奥の席に座ってて、大抵私より早く出社している。
 余裕のある日はよく始業時間まで読書をしている。

 課長は読書好きのようだ。
 いつも本にはカバーがかかっていて、何を読んでいるかはわからないけど、間宮の話では時代小説を好むそう。
 
 今日も時代小説を読んでるんだろうか。

 読書中の課長に視線を向けていると、課長が本から顔を上げてこちらを見た気がした。

 慌てて目を逸らす。

 びっくりした。

 まさか課長がこっちを見るなんて。

「一瀬君」

 課長に呼ばれてドキッとする。
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