課長に恋するまで
 昼休み、間宮とランチに出た。

 間宮が行きたがっていたイタリアンの店だ。
 会社から五分の所にある商業ビルの六階に入っていた。

 間宮が予約を入れていたので、すぐに席に通してもらった。
 窓際で、眺めのいい席だ。

 皇居の桜がピンク色の絨毯のよう。
 春の景色に気持ちが和む。

「お見合いどうでした?」

 メニューを見ようとしたら、間宮が興味津々とばかりに聞いて来る。

「まだメニュー決めてないんだけど」
「会社で聞きたかったけど、我慢したんですよ。ねえ、どうだったんですか?」
「そんなに興味あるの?」
「ありますよ。だって一瀬先輩には幸せになってもらいたいですから」

 間宮が急に心配そうな顔をした。

「先輩、この冬、ずっと元気がなかったから」

 会社では紀子の事は課長以外には話していない。
 普段通りにしてるつもりだったけど、間宮がわかる程、沈んでたんだ。

 心配かけちゃったな。

「そんな事ないわよ。うわぁ、美味しそう。ウニのクリームパスタにしようかな」

 明るい声を上げて、メニューを見た。

 今、紀子の事を話したら泣いてしまう。間宮とのランチを涙で濡らしたくない。
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