課長に恋するまで
「声が優しい感じがした」
「ふーん」
 間宮が相槌を打った。
「あと、銀色の指輪してた。左手に」
「左手って事は結婚指輪ですね」
「多分そうだと思う」
「なーんだ。既婚者か」

 間宮が興味を失ったように声のトーンを落とした。

「なーんだって、何よ」
「先輩に運命の出会いが訪れたと思ったんですけどね」
「だから、そんなんじゃないって」
「あ、先輩時間!」

 間宮が腕時計を見てハッとする。
 同じく腕時計を見た。

 もう始業時間だ!

 マズイ。今日は新しい課長が来るのに。

 準備する為、早めに来たのに全く何もできなかった。その上、遅刻するなんて目立つような事はしたくない。

 間宮と慌てて、更衣室を出た。
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