課長に恋するまで
「恋愛感情がわからないって、どういう事ですか?」

 間宮に聞かれて、大学時代に付き合った人の話をした。三か月付き合ったけど、彼の事を好きだったかどうか未だにわからない。

「それって……ただ単に好きじゃなかっただけなんじゃないですか?」 
 
 間宮があっけらかんと言った。

「だって付き合えば好きになるんじゃないの?」
「先輩」
「何?」
「その人とエッチしました?」

 顔が熱くなる。

 あわあわしていると、サラダと、パンとパスタが運ばれて来た。
 クリームソースのいい香りがする。
 
 ウェイターは丁寧な動作でお皿を置いていく。
 絶対に今の話、聞こえたと思うけど、そんな事どうでもいいようにウェイターは仕事を済ませてテーブルを去って行った。
 
 みんなが軽く流せるぐらいなのに、人前でこういう話をするのが苦手だ。

「それでどうなんですか?」

 間宮が聞いてくる。

「それは……その……」

 間宮の顔を見るのも恥ずかしくて、パスタに視線を向けた。
 湯気が出ていて美味しそうだ。

「いただきます」

 誤魔化すようにパスタにフォークを入れた。
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