課長に恋するまで
「自分の気持ちなのに、よくわかんないってどういう事ですか?」

 間宮が眠そうにあくびをした。

「だって、よくわかんないんだもん。こんな気持ちになった事ないから。課長を見てると、何ていうか、幸せになるっていうか、ずっと見てたいっていうか……。気づくと課長の姿を探してて、課長と話してる時はふわふわした気持ちになって、胸が温かくなるって言うか、ドキドキするっていうか……」

 何とか課長への気持ちを言葉にするけど、とりとめのない言葉が出てくるだけだった。

 こんな気持ちになった事は今までなかった。
 
 課長に出会ってから変だ。
 出会って二日目に恋愛感情が欠如してるなんて悩みを話すし、紀子が亡くなった日は課長の胸で大泣きするし。

 とにかく、課長には無防備になってしまう。

「うーん、先輩……」

 隣を見ると間宮がカウンターに突っ伏していた。

「間宮?ねえ、間宮」
 
 囁くような寝息が聞こえて来る。
 寝ちゃったようだ。
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