課長に恋するまで
 帰宅してからお母さんに電話した。
 保留にしていた平野さんへの返事をする為だ。

 間宮の話を聞いて少しわかった事がある。
 恋愛感情というのは最初からなくてもいいという事だ。
 交際していくうちに気持ちが出てくるかもしれない。

 その、間宮の言ったように体の関係を結べば……。
 
 大学時代の彼を好きになれなかったのは体の関係がなかったからかもしれない。
 そう思ったら、平野さんを好きになれるかもしれないという希望のような想いが沸き上がった。

「あっ、お母さん。遅くにごめんね。平野さんの事だけど、私も交際お願いしたいです。平野さんにそう伝えて下さい」

 電話越しに母の弾んだような声が響いた。

 これで良かったんだ。
 
 電話を切った後、夜空を見た。
 私の決断を応援するように丸い月が出ていた。
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