課長に恋するまで
 平野さんは灰色のカジュアルなジャケットにボーダー柄のカットソーとジーパンで、春らしい服装だった。こげ茶色のセルフレームの眼鏡もかけている。

 やっぱり眼鏡だった。

 二度目に会って平野さんの顔を記憶した。

「おはようございます」

 改札の前で礼儀正しく挨拶された。

「おはようございます」

 同じように返した。

 平野さんと目が合う。平野さんの目は一重瞼で小さく見える。
 だけど鼻筋が通ってて、眼鏡が似合う顔立ちをしてる。

 それで物凄くいい人そうな印象。

「行きましょうか」

 平野さんに言われてモノレールの方に歩き出した。
 歩きながらディズニーランドに来たのは12年ぶりだという話をした。
 年々人が多くなるから、自然と来なくなったと言うと、平野さんがモノレールの券売機の側で足を止めた。

「美月さん、人ゴミ苦手ですか?」

 心配そうに平野さんが視線を下げた。
 私の頭は平野さんの肩口ぐらい。
 
 この身長差は課長と同じだ。 
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