課長に恋するまで
「得意ではありませんね」

 正直に言うと平野さんがいきなり謝った。

「すみません。美月さんのご要望も聞かずに決めてしまいました。そうですよね、ディズニーランドって美月さんにとったら珍しい場所じゃないですよね。子どもの頃に飽きるほど来てますよね」

 慌てたような平野さんの言い方が可笑しくて、自然と笑みが浮かんだ。

「飽きるほどは来てませんよ。それに久しぶりで楽しみにしてたんですよ。自分からは行こうとは思わない所ですから」

「そう言っていただけると、助かります」

「平野さん、行きましょう。ミッキーのモノレールも久しぶりで楽しみです」

「あ、はい」

 平野さんが券売機で二枚分の券を買ってくれた。
 帰りは私が平野さんの分も買おう。
 そう決めて、モノレールの改札を通った。
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