課長に恋するまで
 ディズニーランドに入って、最初に乗ったのはスペースマウンテンだった。屋内型のジェットコースターで、星空の中を走って行く。
 三十分並んで乗れたから、今日はそんなに混んでない。酷い時なんて二時間以上は待たされた記憶がある。

 スペースマウンテンは風を切って気持ち良かった。
 コースターから降りて平野さんを見ると、青白い顔をしていた。

「大丈夫ですか?」
「美月さん、すみません。休憩させて下さい」

 近くのベンチに平野さんを座らせて、飲み物を買いに行った。
 ペットボトルのお茶を二本買って、平野さんの側に行った。
 まだ顔色は悪い。

「どうぞ」
「ありがとうございます」

 平野さんが申し訳なさそうにお茶を受け取った。
 隣に座って、お茶を飲むと、平野さんも同じようにお茶を口にした。

「本当にすみません。あまり寝てないものですから、酔ってしまって」
「寝てないんですか?」
「恥ずかしい話ですが、美月さんに会うのが楽しみ過ぎて、眠れなかったんです」

 私に会うのが楽しみなんて、男の人に初めて言われた。
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