課長に恋するまで
「一瀬君は苦手なものある?」
「え? 苦手な物、聞くんですか?」
「鋏が怖いって弱点を知られたからね。僕も弱みを聞いておかないと」
課長が笑った。
軽い調子で話してくれるのが嬉しい。
「……恋愛かな」
心に浮かんだ事を正直に言った。
「前に課長に恋愛感情が欠落してるって話をしましたよね。やっぱり今でも恋愛だけはわかりません。恋愛ドラマを見たり、恋バナを聞いてるぐらいは楽しいんですけど、いざ自分がプレイヤーになってみると、全くどうしたらいいかわからなくて。好きって感情がやっぱりわかんないんです」
平野さんの事が浮かんだ。
「一緒に出掛けたりするのは楽しいんですけど、でも、やっぱり好きって感情がわからないんです。その人は好きだって言ってくれるんですけど、同じ気持ちになれないのが申し訳なくて。好きになりたいけど、どうやって好きになればいいかわからないんです。それで相手の人に申し訳ないって気持ちになってしまって……」
テーブルに向かって短く息をついた。
「ねぇ課長、好きって言われたら好きになるんじゃないんですか?」
課長が「そうですね」と言って、考えるように腕を組んだ。
「人間として嫌いじゃないけど、男の人として見られないんだろうね。だから今一つ好きという言葉が心に響いてこないのかもしれない」
「そういう事ってあるんですか?」
「一瀬君」
「はい」
「好きだよ」
「え? 苦手な物、聞くんですか?」
「鋏が怖いって弱点を知られたからね。僕も弱みを聞いておかないと」
課長が笑った。
軽い調子で話してくれるのが嬉しい。
「……恋愛かな」
心に浮かんだ事を正直に言った。
「前に課長に恋愛感情が欠落してるって話をしましたよね。やっぱり今でも恋愛だけはわかりません。恋愛ドラマを見たり、恋バナを聞いてるぐらいは楽しいんですけど、いざ自分がプレイヤーになってみると、全くどうしたらいいかわからなくて。好きって感情がやっぱりわかんないんです」
平野さんの事が浮かんだ。
「一緒に出掛けたりするのは楽しいんですけど、でも、やっぱり好きって感情がわからないんです。その人は好きだって言ってくれるんですけど、同じ気持ちになれないのが申し訳なくて。好きになりたいけど、どうやって好きになればいいかわからないんです。それで相手の人に申し訳ないって気持ちになってしまって……」
テーブルに向かって短く息をついた。
「ねぇ課長、好きって言われたら好きになるんじゃないんですか?」
課長が「そうですね」と言って、考えるように腕を組んだ。
「人間として嫌いじゃないけど、男の人として見られないんだろうね。だから今一つ好きという言葉が心に響いてこないのかもしれない」
「そういう事ってあるんですか?」
「一瀬君」
「はい」
「好きだよ」