課長に恋するまで
 仕事が終わった後、鈴木さんと東京駅近くにある海鮮居酒屋に入った。
 今日は魚が食べたいと二人そろって思ったからだ。

 カウンター席とテーブル席があり、横並びの方が話しやすいという鈴木さんの希望でカウンターにした。
 月曜日という事で、店はあまり混んでいなかった。
 ビールと刺身の盛り合わせと、枝豆と冷ややっこを頼んだ。
 すぐにお通しとビールが来た。

 鈴木さんと乾杯をして、ビールで喉を潤した。

 ぷっはー、うまい。

 仕事終わりのビールはやっぱり美味しい。
 特に今日は忙しかったから身に染みる程そう感じる。

「月曜日から飲みに来るなんて贅沢よねー」

 鈴木さんが嬉しそうに言った。

「こういうの久しぶりだな。いつも急いで帰って、子どものお迎えに行って、洗濯物取り込んで、夕飯作ってってやってるからさ」

 聞いてるだけで大変そうだ。
 一人分の家事と三人分の家事はやっぱり手間が違うんだろうな。

「夕飯が終わったら、後片付けしてさ、子どもとお風呂に入ってさ。それで旦那が帰って来て、旦那のご飯用意してさ、また片付けてさ。洗濯物畳んで、明日の準備して……」

 鈴木さんがため息をついた。

「一瀬ちゃん……」

 鈴木さんが泣きそうな顔をした。
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