課長に恋するまで
　課長のプライベートを邪魔してしまった事、それから課長のツケでウィスキーを飲んでしまった事などを謝罪した。
　話を聞き終わると、課長は優しい笑顔を浮かべる。

「全然大丈夫ですよ。むしろ助かりました」
「どういう事ですか？」
「正直な所、早く帰りたかったんですよ。ゆかりちゃんには仕事の事で世話になったので、そのお返しに同伴を強請られてね。それで昨日、お店に行った訳です。でも香港から帰って来たばかりだったから、くたびれてて。だから全然迷惑ではありませんよ」
「そう言って頂けると、助かります」

　少しだけ心が軽くなった。

「ウィスキーも気にしないで下さい。ボトルキープしてるやつだと思うから大丈夫です」
「高級クラブって初めてだから、仕組みがわからなくて。もう、何百万円も課長に使わせてしまったらどうしうよって気が気でなかったんです」
「真面目な一瀬君らしいですね」

　課長が笑った。

「思いつめた顔をしてたから、どうしたんだろうと心配してましたが、そういう事だったんですか」
「昨夜の事もありますけど、他にもあります」
「他というのは仕事の事ですか？」

　課長の顔から笑みが消えた。

　これから私の言う事をわかってるみたいな顔をしていた。
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