課長に恋するまで
　　深呼吸してから、課長に胸の内を話した。

　今回の仕事が私にとって荷が重すぎる事、プロジェクトリーダーとしての経験が足りない事、なぜ事務職の私が選ばれたのかわからない事。その事について憤りを感じている事など、一気に喋った。

　喉が渇いた。

　課長を見ると、いつもと変わらない穏やかな顔をしていた。
　少しもこっちの言い分が届いてないように見える。

「とにかく私は課長が期待するようなバリバリ仕事をするような人間じゃないんです。寿退社して家庭に入るつもりだから、会社も腰掛け程度しか考えてないし、事務職を志望したのもそういう事なんです！」

　納得できない感情を込めて話の最後にテーブルを強く叩いた。
　コーヒーカップが揺れ、中の液体も波のように動いた。波は縁のギリギリで留まってこぼれる事はなかったけど、テーブルを叩いたのは少しやり過ぎた。

　黙ったままこっちを見る課長の眉が僅かに険しくなる。
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