課長に恋するまで
 6月後半。
 
 この一ヶ月、レイ・リーのブランドショップ出店準備に追われていた。

 オープンは9月下旬となっているが、そのスケジュールがとんでもないものだという事を、携わってみて知った。
 普通、開店準備には10ヶ月ほど必要になるが、それを半分以下の期間でやるんだから、毎日が戦争だ。

 事業計画書の作成から始まり、レイ・リー側のスタッフと毎日のように顔を合わせ、コンセプトを決め、広告代理店にキャッチコピーを頼み、商社の人脈で店長になってくれる人材を探し、何とか面接までこぎつけた。

 今日は面接だった。
 面接官なんてやった事がない。課長も同席予定だったけど、急な案件が入って来れなくなった。
 課長に一瀬君の目で見て信頼できそうな人を選んで欲しいと言われたけど、みんないい人に見えた。

 面接に来て頂いたのは5名で、みんなブランドショップでの店長経験があり、レイ・リーブランドについても理解している。ていうか、私より詳しい。

 お洒落だし、着ている物も良かった。
 黒いパンツスーツの私だけがその場で浮いて見えるぐらいだった。

 いくらなんでも、課長、無茶ぶりだ。
 私に店長を決めろなんて。
< 174 / 247 >

この作品をシェア

pagetop