課長に恋するまで
「あれ、一瀬君?ごめん、少し寝ちゃったみたいだ」

 課長が目を開けた。

「もうこんな時間か」

 課長が腕時計を見た。
 今は午後七時半。

「本当にすまない」
「いえ」

 恥ずかしくて課長と目が合わせられない。
 だって七時から七時半までの三十分間、課長の寝顔を独占させていただいた。

 それに、

 それに……。

「少しじゃないな。一時間近く寝てたね。本当に申し訳ない」

「い、いいんです。課長もお疲れでしょうから。面接の事ですけど」

 ドキドキする気持ちを抑えて、話を進めた。

 顔が熱い。

 課長の顔が全く見れない。

 書類とノートパソコンだけを見た。
 早口で話しながら、重なった唇の感触を意識から追い出した。

 今夜の事は一生の秘密だ。
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