課長に恋するまで

妙な夢

 6月後半。

 慌ただしくなって来た。
 レイ・リー関連の仕事で毎日かかりきりになっている。
 本社に来て、ようやく大きな成果が出せた。

 長野にいた時は金属関係の仕事に関わっていたので、畑違いの部署に来てしまったが、扱う品は変わっても基本的には同じだ。川上から川中、川下(原料が製品になり、販売されるまでの例え)の間にある美味しい所を持っていく、それが商社の仕事だ。今回は川下を頂く事ができた。

 レイ・リーと契約を結んだ事を知らせると、香川は子どものように喜んでくれた。
 元々、この話は香川から持ち掛けられた。
 レイ・リーの販売権を何とかして欲しいと、昨年の12月に銀座のクラブで打ち明けられた。
 それからは情報収集に努め、月に一度、香港に足を運んでレイ・リーとの信頼関係を築いた。そして5月の契約までこぎつけた。
 契約まで半年かけた仕事だった。

 しかし、契約の条件としてブランドショップをこちらが短い準備期間で用意するというのは予想外の事だった。
 競合相手を出し抜くには、飲むしかなかった。
 
 一瀬君は本当によく働いてくれている。
 準備期間もほとんどない中、毎日、懸命に動いてくれている。頼もしいパートナーだ。
 人選に間違えはなかった。

 だが先日、妙な夢を見た。
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