課長に恋するまで
「何だっけ?」
「いつもお見合いの話すると、そうやってスルーするよね」

 葵の呆れたようなため息が聞こえた。
 なんだ、見合いの話だったか。

「また京子おばさんにけしかけられたか?」

 京子さんは兄のお嫁さんだ。世話好きな人で、事あるごとに再婚話を持って来るが、妻以外の人と一緒になる気はない。

「そうよ。京子おばさんが心配して、いい人紹介するって言ってるの。お盆に帰って来た時にお見合いしないかって。40才の薬剤師さんだって。それで実家がお金持ちで、可愛くて、よく気が利く人なんだって」

「興味ない」

「私も真一も結婚したら、お父さん一人だよ」

「自由気ままに生活するよ。今だって久しぶりの一人暮らしを満喫してるんだ」

「とか言って、だらしなく夕方まで寝てたんじゃないの?」

 さすが葵だ。よくわかってる。
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