課長に恋するまで
 火曜日。

 朝から会議に出ていた。今日は三つもあり、オフィスに戻れたのは夕方だ。
 デスクの上にはメモが溜まっている。
 メモを見る前に、一瀬君の席を見た。まだ戻っていないようだ。

 レイ・リー出店準備で、一瀬君は社外に出ている事が多い。
 今日は表参道の店舗で打ち合わせがあると言って、出て行った。
 
 一瀬君の空の席を見ながら、パーティーの事で後ろめたさを感じる。あんなにゆかりちゃんが喜んだのだから、女性にとっては魅力的なパーティーだったかもしれない。
 一瀬君も行きたいって言ったかもしれない。

 まず一瀬君に話すべきだったかな。

 夢に一瀬君が出て来てから、関わりを少なくするようにしている。
 もう妙な夢は見ないが、夢の中の出来事が現実になりそうで怖い。

 一瀬君に特別な好意を持たれるような事はないとわかっているが、こちら側が上司と部下という適性な距離を壊しそうで怖いのだ。

「課長、聞いてますか?」
 間宮君に声をかけられた。
 いつの間にか書類を持った間宮君がデスクの前まで来ていた。

 いかんな、仕事に集中しなければ。
 気を引き締め、間宮君が持って来た書類に目を通した。
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