課長に恋するまで
 ドレスコードはタキシードとイブニングドレスとなっていた。
 今夜は黒いタキシードを着用している。
 招待客の男性は似たような服装に見えるが、女性は華やかなドレスを身に着けている。ゴールド、赤、ピンクなどが目についた。

 一瀬君とは正面玄関で待ち合わせていた。
 一瀬君の事だから、きっと黒か紺の控えめなドレスを着てくるだろうと思い、黒いドレスの女性ばかりに気を取られていた。

「遅くなりました。すみません」
 いきなり声を掛けられて驚く。
 一瀬君は肩の出た赤いドレスだった。

 ドレスの赤は薔薇を感じさせる。
 メイクもドレスに合わせて、赤いルージュを引いていた。

 アップにした髪、白い首、胸元のアクセサリーに、白い肩。
 そして見上げる大きな瞳。

 綺麗な子だとは思っていたが、こんなに美しいとは。
 一瀬君の美しさに動揺する。

「課長?」
 黙ったまま見つめていると、一瀬君が不安そうな顔をした。

「あ、いや、行こうか」
 ドキドキして一瀬君を直視できなかった。
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