課長に恋するまで
 社長との挨拶の後は業界関係者に挨拶をして回った。
 ファッション誌の編集長や、デザイナーからは一瀬君の事をモデルか新人女優だと思われ、「今度是非、うちで使いたい」なんて言われた。
 一瀬君は「とんでもないです」と恥ずかしがっていたが、今夜の一瀬君は魅力的だった。
 レイ・リーブランドのドレスがよく似合い、招待客からの視線を集めている。
 本人は自覚がなさそうだが。

「そのドレス、よく似合ってますね」

 一瀬君が照れ臭そうに微笑んだ。

「デザイナーの方にコーディネートしてもらったんです。こんな派手なドレス着せられるとは思わなかったから、どうしたらいいかわからなくて。お化粧も全部やってもらって……あの、変じゃありませんか?」

 自信なさそうに見上げた一瀬君の表情は、はにかんだような、照れたような、もじもじとしたものだった。
 オフィスでは見た事のない小さな女の子みたいな表情だ。

「自信を持って下さい。綺麗です」

 頬を染め、嬉しそうに笑った一瀬君に胸がくすぐられた。
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