課長に恋するまで
「すごいー!」
 
 入社して半年の間宮(まみや)かおりが感動したように言った。
 入社四年目の私は間宮の教育係だ。
 
 今日は展示会の手伝いで社外に出ていて、今は昼休みで、休憩スペースで間宮と二人で、お弁当を食べていた。
 で、何か面白い話をして欲しいと言われたので、妹の事を何となく話してみた。
 間宮からこんなにいい反応が返ってくるとは思わなかった。

一瀬(いちのせ)先輩の妹さん、それでどうなったんですか?」 

 間宮が続きをせがむように見てくる。くりんくりんの大きな目が好奇心で溢れていた。

「親の反対を押し切って先生と結婚したわよ。今は1才になる子どもがいる」
「妹さん、幸せになったんですね。なんかいい話聞かせてもらいました」

 間宮がお世辞ではなく、本当に胸打たれたというように目をうるうるさせた。

「一瀬先輩、ありがとうございます。本当にありがとうございます」

 間宮の目に涙が溢れてくる。

「えっ、そんなに感動した?」

 間宮の反応にびっくり。

「だって、だって大反対の中、自分の気持ちを押し通して凄いじゃないですか」

「間宮、これ」

 間宮にハンカチを渡すと目にあてて、泣き出した。

 かなりの本気泣きだ。
 午後もまだ仕事が残っているというのに。

「お化粧、崩れちゃうわよ。ああ、もう、よしよし」

 間宮を宥める為、優しく肩をトントン叩いた。

「一瀬、間宮、ちょっと来い」

 同期で主任の石上(いしがみ)が休憩室に入って来た。
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