課長に恋するまで
 課長の方を見ると目が合った。その瞬間、背中にぞわぞわっとしたものを感じる。
 急に居心地が悪くなる。

「では、私はここで失礼します」
 課長にお辞儀をした。

「一瀬、食べて行かないのかよ」
 石上が肩透かしにあったような顔をした。

「そうですよ。先輩」
 間宮も言った。

「今日はお弁当持ってきちゃってるから。さすがにお店で広げられないでしょ」
「本当はこの店の味に自信がないから逃げるんじゃないのか?」

 石上がつっかかってくる。
 ムッとした。

「逃げてません!石上に教えるのはもったいないぐらい美味しいんだから」
「だったら食って行けよ。案内したやつが来ないってないだろ」
「だからお弁当だって言ってるじゃない」
「弁当なんて後で食べればいいだろ」
「はあ?何言ってんの!お昼に食べなかったらいつ食べるの?」
「夕飯にすればいいだろ」
「おかずが傷むし、味が落ちるじゃない」
「じゃあ、弁当は諦めてみんなに付き合えばいいだろ。今日は課長も一緒なんだぞ。空気読め、この自己中女!」
「なんでそこまで言われなきゃいけないのよ!私は今日のお昼にお弁当を食べるのを楽しみにして、朝六時に起きて作って来てるのよ!今日は肉巻き作って来たんだから!」

「……先輩、先輩」

 間宮がつんつんと肩を突っついて来た。
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