課長に恋するまで
「一瀬君こそ大丈夫?さっき酔いが回ったって言ってたけど」

「何とか落ち着きました」

 一瀬君がこっちを見て笑った。

「どうしたの?」

「なんか、ロマンティックだと思って。タキシード姿の課長と、こうして二人きりでバルコニーになんて出ちゃって。音楽も聴こえてくるし。映画の中にいるみたい」

「相手が僕で申し訳ない」

「課長だからそう思うんですよ。今夜の課長、素敵です」

「ありがとう」

 一瀬君とまた目が合う。
 
 今度は逸らせない。
 一瀬君もじっとこちらを見ていた。
 
 鼓動が早くなる。
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