課長に恋するまで
 帰りは酔いつぶれた一瀬君とタクシーに乗った。
 ふにゃふにゃと幸せそうな顔をして眠っている。
 安心しきった表情が微笑ましい。

 結婚するのか。

 夫になる男は毎晩、無防備な一瀬君の寝顔を見るんだろう。

 この寝顔を自分だけのものにしたい。

 初めてそんな風に感じる。
 上司として行き過ぎた想いだ。

 横浜のパーティーから、一瀬君を部下以上の気持ちで見るようになった。

 あの夜の一瀬君にずっと捕らわれてる。
 一瀬君と見つめ合ったあの瞬間、心の深い所が揺さぶられた。

 部下に特別な想いを抱くなんて間違ってる。

 間違ってるんだ……。 
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